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1)インターネットがタダになる?<値段の高さ、価格破壊>(Pride) (1996)

この記事は、1996年に書いたものです。

  • 現在の価格はなぜ高いのか? プロバイダーの価格、収支構造。
  • ハイパーネットなどの広告方式により、プロバイダー利用料をタダにするサービスも始まった。
  • 将来はコンテンツに課金し、回線は無料にするべきだという論もある。
  • OCNは戦略的に低い価格を設定しており、ユーザーにはうれしいが、弱小プロバイダーは耐えられないのではないかという見方も。
 インターネットプロバイダの価格体系は、コストを積み上げたモデルで提供さ れているか、ユーザの購買能力を仮定して設定されているかのどちらかである ことが多い。初期のインターネットプロバイダである、IIJ、SPIN、InfoWeb などは典型的に、前者である。後者に該当するのは、個人向けの定額性のダイ アルアップサービスを提供しているプロバイダに多い。東京インターネットな ども、後者の意識が強い部類だと考えられるが、素材の主たるものである専用 線のコストにはひきずられることはやむをえない。

広域のコンピュータネットワークを構築する際の欠くべからざる素材となるデ ジタル専用回線の価格に関しては、インターネットのコマーシャルサービスが 開始された当初はアメリカに比べ、5倍~8倍であると言われていたが、現在 はこの格差が広がる傾向にあり、1.5Mbps 程度の回線では、10倍という事態 も起こっている。これは、日本では新たなサービスが登場することが非常に少 なく、競争がほとんど起こっていないという点が最も大きいだろう。

これを改善する試みは行われている。例えば光ケーブルを地方自治体等が建設 し、それを利用してサービスを行うことができる。しかし、このケーブルを利 用することができるのは、NTT、NCC などの第一種電気通信事業者だけで、斬 新なサービスを提供する可能性のある民間企業が自由に使うことはできない。 需要、利用法が急速に変化し、予測がほとんど不可能である段階であり、この 将来を容易に予測することはできない。このような場合では、マーケットの形 成以外に適正な価値評価を行うことは難しいと思われる。

単純にコストを積み上げたものをユーザで分配するのではなく、それにより利 便を受けるものがコストを負担するというモデルを導入するケースも出現して きた。テレビ、ラジオなどのマスメディアに見られる広告収入に頼る形態など がこれにあたる。広告だけでなく、その内容、コンテンツ提供者に対する課金 を行い、その利用者には課金しないという場合もある。これに限らず、通信部 分に課金するのではなく、他の部分で補填するという考え方は他にも出て来る であろう。これは、今後ネットワークがより高速、大容量化することで、1エ ンドユーザ当たりのコストは必然的に下がることが予想されるということを前 提にしているだろう。マスメディア的な発想を盛り込んだものである。しかし、 インターネットが利用者の能動的な行動によって利用されることを考えれば、 この方式一色になることも考えにくい。

新しい通信インフラストラクチャの建設という点では、NTT の提示した OCN (オープンコンピュータネットワーク) が注目されている。ただ、OCN がイン ターネットサービスを提供するものであるのか、インターネットを含めた、コ ンピュータネットワークインフラストラクチャを提供するものであるのかは、 判然としない。コンピュータネットワークに対するニーズは、現在のインター ネットプロバイダの提供しているサービスだけでなく、今後より多様なものが 求められると考えられる。OCN はそれに一石を投じたことは確かであるが、 NTT がユーザニーズと、利用者環境を的確に把握してリードしていかなければ その普及は望めない。INS64 の登場した当時の環境は貧弱であり、ほとんどこ れを利用する環境がなかった。その後 NTT は一時 INS サービスの縮小を検討 したが、インターネットのブームによって、64+64 の高速の通信路としての利 用が出て来たことで、息を吹き返した。しかし、光ケーブルを用いた INS1500 に関しては、収益性が不安定であるという理由で、サービスを縮小する方向に ある。OCN がこの二の舞にならないという保証はどこにもない。