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災害とインターネット

インターネットの歴史の中で、大きな災害とのかかわりは重要なポイントだ。阪神淡路大震災、東日本大震災という巨大地震を2度経験し、熊本地震もこれに次ぐ大災害だ。阪神淡路大震災は、1995年。インターネットはまだ一般に普及しているとは言い難い時代だが、既存のテレビ、ラジオといったメディアとは異なる可能性を見せつけたことは確かだろう。残念ながら、あまり、認知はされているという状況ではなかった。すでに総理官邸の Web は開設されていたが、当時はこの件に関して機能はしなかった。

一部のテレビ局の人の協力で、情報をインターネットで閲覧可能にした。当然ながら、大阪大学を中心とする関西地域のグループが活躍した。

ボランティアという言葉が一般的になったのはこの時からだと思う。ボランティア活動にかかわる人が、電子メールや、インターネットを活用した。

この後、防災に関係するプロジェクトに関わることが増えた。あらかわコミュニティネットという、荒川下流工事事務所が中心となるプロジェクトなどがあった。この時に防災の専門家と検討したのが、日常的にも活用するツールだ。訓練の重要性は論を待たないが、インターネットを活用する防災ツールについて訓練を行うということも必要だが現実的ではない。

その後、SNS とスマートフォンの普及によって、日常的に使っているツールができた。現在ほどではないにしろ、東日本大震災ではその威力が示されただろう。

ちょうど東大の特任教授になり、komaba-alert という、一斉通報・安否確認システムを作ったばかりだった。komaba-alert というのは、メールで一斉通報をするシステムだが、日常的な利用としては、休講情報を配信するということを行い、学生の利用を促進した。当初のシステムは、まったく教務課などの協力を得られず、勝手に教務情報の Web を読み取って解析して、メールを配信した。稼働半年後地震が起きた。komaba-alert による安否確認は、発災30分後に発信され、1時間以内に登録者約70%の安否を確認した。その年の東大の総長賞というのを頂いた。その後、関係者の協力も得られるようになり、休講情報もより迅速に配信できるようになった。ところが教務システムが更新されることになったので、今度は最初から考慮されるか、いっそこうしたシステムが内部に取り込まれると思っていたが、今度もかやの外らしい。私はもう東大のスタッフではないので、手を出すことはできず、話に聞くだけである。

今は、もうメールの時代ではないので、SNS を活用した次世代のシステムを作らないといけないと思っている。東日本大震災の時も、被災した学生に関しては、直接の連絡は非常に困難であり、友人等による連絡によって確認した事例もあった。

日常的に使っているシステムでなければ災害時にも重要な役割を果たすことができないというセオリーははっきりしていると思うのだが、残念ながら、日常のシステムにそれを取り込むことを最初から考慮するのは未だにできないというのは残念だ。