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PC内外価格差

WIDE Project では、村井さんが、US から Proteon のルータをハンドキャリーで持って帰ってきて、税関で揉めたものの、無事に持ち込んで、US との国際接続が開始したという話が有名だが、我々の使うコンピュータは、やはり日本では作っていないか、バカ高くて、海外からせっせと持ち込んだ。

1980年代は、VAX か、Sun がほとんどであったが、やはり純正のディスクとかはとても高かったので、SCSI のディスクとかは、香港から買ってきたこともあったし、アメリカに出張すると、Fry’s に行って鞄いっぱいコンピュータの部品を買ってくることが常であった。

1992年に、386bsd が公開され、BSDI 社から BSD/386 が発売されると IBM/PC 互換機で BSD が動作するということで、さらにこのショッピングが盛んになった。まだ、当時日本では IBM/PC 互換機のマーケットが十分立ち上がっているとはいえず、BSD とX-windowを動作させるのに、ハイエンドでかつ、限られたデバイスが必要だったために、アメリカ、香港から買うことが多かった。

冗談交じりに言ってたことは、PC1台を国内で買うのと、香港で買うのとでは、往復ビジネスクラスで中華料理を食べても香港のほうが安いという話があった。

その後、IIJ を立ち上げた後、IIJ のオフィスで使うPCはカリフォルニアから輸入した。香港からでもよかったのだが、ハイエンドのBSD/OS readyの PC はカリフォルニアから買うほうが簡単で、流通量も多く、輸送費を入れても香港からと大差なかった。時期的には、香港の中国返還前である。IIJ では、CISCO のルータも、直接アメリカとVAR契約して、カリフォルニア渡しで輸入した。まだ、日本の代理店にサポートする力もなかったためだ。こんなことをできる人は限られるので、そうでない人が適切な手数料を払って購入し、サポートを受けるのはやむを得ないだろう。

その後、メディアエクスチェンジやいくつかの会社で自社システムの構築を行ったが、国産メーカーのネットワーク機器(日立→アラクサラなど)を積極的に採用するようになったので、内外価格差についてはあまり関心を持たなくなっていた。PCや、サーバに関しては、Dell の直販によって、大きな差がなくなったということもあった。

それが再び、強い関心を持つようになったのは、既設のネットワーク機器に部品を増設する必要が生じた時だ。もう導入から5年も経過して、10GbEも一般化したので、安く手に入るだろうと思って、ネット検索をした。そうしたら、約 1/50 の価格で中国から買えることが判明した。その中国(深圳)のメーカーとメールのやり取りをして、テストもして購入をして使用した。

そうすると、他のものはどうだろうかと気になり始めて調べてみた。油断している間に、価格差の開きが生まれていることに気づかされた。メモリーカード、SSD は日本で買ったほうがむしろ安いが、PC 製品が意外に日本は高止まっていた。特に、タブレット、スマートフォンで安い品物が海外では出回っている。今は Wi-Fi, Bluetooth, 3G/LTE といった無線を使うので、このような製品は、日本の法律に適合しなければならないため、厳密にいうと技適(総務省令に定められた、技術基準適合証明と技術基準適合認定のいずれか、または両方)を取得してないと使用してはならない。したがって、これらの製品が日本国内では簡単に販売されないということもある。

しかし、価格の開きはこれらの製品が特別大きいわけではないことに気が付いた。衣料品、生活雑貨も同じような 2~2.5倍という価格で流通しているように感じる。この理由には、言語の問題と、品質に対する要求があることが一つの要因だろう。中国から、直接通販で買うことも可能なのだが、その品質、リスク、交渉、コミュニケーションに不安を抱くので、いくら価格が安くとも簡単に手がでないだろう。

それとは別に、そもそも日本はマーケットが小さいのではないかという疑念もわいてきた。ネット通販では、商品を陳列するスペースが不要なので、より多くのバリエーションに対応できるが、それでも商品の制作、在庫という点ではより大きなマーケットを相手にするほうが有利である。衣料品のサイズにしても、日本人の平均的な体形であれば問題ないが、そうでなければ大きくても小さくてもバリエーションに限りができる。ただ、他の国の人の体形は同じではないので、そちらに近ければ有利である。これはすべての分野に当てはまることだ。ゴルフ用品も私は全部アメリカから直接輸入したものを使用している。これがちょうどいいからであるが、日本の平均的なプレイヤーにはややハードであるらしい。

日本のメーカや、販売店は、もちろん日本の平均的なユーザに合わせているので、それに合うニーズについては問題ない。それは世界の中ではごく一部であるばかりか、平均値でもない。インターネットによって、世界にアクセスできるようになったので、世界に目を向けると日本やアメリカで起こっていることが一般的なものではないことに気づくと思う。

言語は、機械がなんとかしてくれる時代になってきている。

Aliexpress という中国の Alibaba のやってる中国国外向け個人向けショッピングモールがあるので、見てみるといい。原則的には中国から世界に向けて販売するのが主だが、一部にヨーロッパなどからの出店もある。Amazon と楽天を比べると楽天の得意分野の一つはファッション系だといわれるが、同じものを見つけるのにそれほど時間はかからない。価格を比べてみるとよい。いまでこそ有名ブランドに成長した Victoria’s Secret だが、10年ほど前は、ヨーロッパの有名ブランドに似てるものが多いといわれたものだ。いま、Aliexpress を覗くと Victoria’s Secret に似た商品を容易に発見できる。深圳は電子部品が有名だが、こうした衣料品のメーカも多い。