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インターネットプロバイダの役割 (1995)

これは、1995年に書いたものです。

利用者にインターネットの接続を提供するプロバイダはなにをしているのでしょう。

インターネットはさまざまなネットワークの相互接続になっています。インターネットは典型的に は、LAN と LAN を専用回線で結んで作られます。プロバイダはこれを合理的に行うために、NOC (Ne twork Operation Center) や POP (Point of Presence) と呼ばれる場所を設けます。ユーザとの接 続は NOC に置かれたルータと、ユーザのところの置かれるルータとの間を専用回線やフレームリレ ー網などで結びます。1 つの NOC とそこへ接続されるユーザの関係に注目するとスター型のネット ワークになるのが現在の典型的な形態です (図1)。

そして、離れた NOC や POP の間を高速の回線で結び、異なる NOC に収容されるユーザ間の接続 性を得ます。これをバックボーンネットワークと呼ぶことにします (図2)。

NOC の内部は、回線接続を行う設備や集合型のルータ、ネームサーバや各種のサービスを提供する サービスホストコンピュータとその間を結ぶ LAN が主な要素です。この LAN もバックボーンネット ワークの一部といえるでしょう。

このようにして、インターネットプロバイダはバックボーンネットワークを作ります。そしてこう したインターネットプロバイダ同士がさらに専用線などを用いて相互に接続したのがインターネット (図3) です。

インターネットはフラクタルや雲に例えられることがよくありますが、これはこのような構造をも っているためです。

インターネットプロバイダは、このバックボーンネットワークの構築、管理、他のプロバイダのネ ットワークとの相互接続を行います。現在の日本のインターネットでは主に第一種電気通信事業者 (NTT, KDD などの専用回線を提供する事業者)から回線を借りて遠隔地間の接続を行います。この 上に TCP/IP などのネットワークを構築しています。まさに VAN (付加価値通信網)であるわけで す。インターネットプロバイダの中には国際接続(現状では対アメリカ)を国際専用回線を用いて接 続している場合 (IIJ, SPIN が代表的)と、この国際接続を持っているプロバイダのサービスを買っ て接続性を得ている場合とがあります。専用回線の代わりにフレームリレー網を使い、他のサービス と共用しているケースもあります。

一般の通信サービスと違って複雑であるのはインターネットはコマーシャルプロバイダだけから構 成されるわけでなく、学術・研究ネットワークが存在しているということです。これらも物理的なネ ットワークとしては同じものです。これに限らずインターネットの要素は規模の大小に限らずフラク タルにたとえられるように、企業のネットワークや、大学のネットワークというプライベートネット ワークもインターネットの一部になります。研究・学術ネットワークもプライベートネットワークの 一つです。プライベートネットワークを「通過」して第三者と通信をすることは通常できません。

コマーシャルプロバイダと、学術・研究ネットワークは現状それぞれ別々の国際回線、バックボー ンネットワークを使っています。それぞれその費用の負担はコマーシャルプロバイダは、利用料金で 、学術、研究ネットワークは、研究費や国の予算などでその費用がまかなわれています。

プロバイダは、バックボーンネットワークを構築するための設備、回線費の負担がまず必要になり ます。そして他のネットワークとの接続を行うための費用がこの上にかかります。特に国際回線の費 用負担は大きく日本からアメリカまでの回線費はほとんど日本のプロバイダの負担となっています。 これは国際専用回線の費用は両端で支払いが発生し、日本側の価格と、アメリカ側の価格に現在大き な差があり、アメリカ側の負担はもともと軽いということもあります。場合によってはアメリカのイ ンターネットプロバイダへの支払いが発生していることもあります。

国内のバックボーンのための遠距離の回線も大きな負担の一つです。最近のようにインターネット の利用が盛んになってきてトラフィックが増加すると、NOCの内部の設備、LANの充実も大きな要素に なってきています。

また、世界的なインターネット関係の調整機関である、インターネットソサエティや CIX (Commer cial Internet Exchange) などへの参加などもインターネットの接続性を維持するために重要なもの です。

そして、最も大変なのがこれらのネットワークを合理的に構築し、安定に運用し、インターネット の技術と、増えつづける利用に対応することを継続して行う運用体制をもち、ユーザの的確なサポー トを行うことです。

インターネットがサービスとして提供されるようになって非常に日が浅いので、いろいろ混乱して いるのが現状です。まだしばらくこの状況が続くと思われます。今回はバックボーンに関する部分だ けをとりあげましたが、接続サービスのいろいろについて次回以降取り上げたいと思います。